上諏訪発豊橋行544M,湘南電車は谷を行く その5
―12時36分発,豊橋行き間もなく発車を致します。

心の準備も成せぬままに列車は発車,洒落たステンドグラスのある
天竜峡駅舎に見送られて,トンネルをくぐり,鉄橋を渡る。

(ぇ

余りの変わりようにとかく驚く。山が余りにも突然に迫ってきて,
天竜川の崖っぷちをいきなり走り始めた訳ですんで。
驚きっ放しのまま千代に到着。
降りる人も乗る人も一切なし。あんなに人気のあった天竜峡から
たった3分程でこんな人里離れたところへ…
(後日,地図を見ると1.5キロ圏内に集落があった。
―次は金野,金野です。

ここは日本か?と思わず戸惑う。駅前に錆びた自転車置き場があったが,
壊れた自転車が2台放置されているだけだった。
集落へと延びるであろう橋も,あとは野になれ草になれ。


金野

唐笠
唐笠で2名下車。駅前から上の方へ道が延びている。
集落があるのだろう。

いつしか誰かがいっていたように,トンネルの数が半端ではない。
天竜峡からここまで20位くぐった気がする。
中には非常に短いものもあったから,吾妻線のあのトンネルが新線付け替えで
なくなれば,こちらが日本一短いトンネルになるかも知れない。
ついでに,2位も3位も,下手をすれば5位位まで独占か?

門島

田本
門島を過ぎると,携帯電話機の画面に「圏外」の文字が表示されっ放しになった。
田本では1名が下車。恐らく,同業者。

温田

為栗
温田,為栗,難読駅にも数えられる二駅を通過。
温田はこの泰阜村の中心地らしく,駅前からは随分と立派な橋が見えた。
某T元知事がここに住むとか住まないとかで話題になった村だけども,
ここまで県庁と離れていてはねぇ…。
為栗にて。

そこそこに整備されているが人の匂いが全く感じられない。
これは,昨年の夏に訪れた,大糸北線に似た,いや,それ以上の雰囲気。
何せあの時は人が一杯だった―乗客はひと車輛に5人いるかいないか。

これまたトンネルが連続するものだから,地下を走っているのではないか,
とも思えてくる。
為栗〜平岡間。
山間にこのようなアーチ橋が忽然と現れると少し戸惑う。
このアーチ橋から今まさに渡っているこの鉄橋を,列車が渡る構図が
有名だそうだが,撮りに来る勇気はそう持てまい。

ただ,紅葉の頃に来るとこれは非常に綺麗であろう。
平岡。
とうとう,長野県最南端の村天龍村に到着。
ここで5分ほどの停車,数時間ぶりに車輛の外に出てみる。
上諏訪からはるばる4時間。ひどく遠いところに来てしまった気がするが,
この車輛にしてみれば,今朝5時に天竜峡を経ち,3時間ほどかけて上諏訪へ
それから6時間ほどかけて豊橋に向かうばかりだから,まぁ何ともないのか。
咲いているのはヒカン桜か?
ソメイヨシノが咲く頃には走っていないであろうこの車輛,
最後の早春風景を撮ってみる。
上諏訪発豊橋行544M,湘南電車は谷を行く その6

いい日旅立ち